ファイトソング〜追憶の巻その14〜
土曜日。
今日と明日は金丸さんのお祭りだ。
俺たちも夜が明けきらないうちから準備を始めた。
俺と潤がベビーカステラ、智くんと雅紀とカズがたこ焼き担当。
暑くなりそうだ。
タオルをおでこと首に巻いて、ただひたすら焼く。
チビっ子がお小遣いを小さな手で出して
10個ください!なんて言われたら、ついオマケしちゃうんだよ。
一緒にいるお母さんにまた来てください!なんて笑いかけると
次の日や、また次の時も来てくれたりする。
消費するスポーツドリンクの量がハンパねぇ。
斜め向かいでたこ焼きを焼いてる雅紀を見る。
鉄板の暑さで真っ赤な顔をしながらも、雅紀もとびっきりのスマイルで、お客さんの相手をしていた。
俺も、雅紀のたこ焼き食いてぇなー。
でも、ちょっと暑いなぁ。
朝から夕方まで、客がとぎれることはまったくなくて、
どんどん焼いていかないと行列になっちまう。
夕方になるにつれて、客が増えてきて
向かい側の屋台すら、人込みで見えなくなってきた。
翔さん、ごめん、ちょっとトイレ。
おぅ!
潤がトイレに行ったと思ったら、ものすごい形相で帰ってきた。
翔さん!翔さん!
お前、早いなぁ。
ちげーよ。斜め前!!まぁのところに来てるの、バスケ部の先輩だよ!
え?!
人込みの隙間から、なんとかたこ焼き屋を覗き込む。
雅紀が相手をしているのは確かにバスケ部の先輩2人。
この前の温室の光景が蘇る。
智くんが何か言ってくれているけど、雅紀がそれを制して、一緒に屋台を出て行った。
翔さん!早く!追いかけないと!!なんか雰囲気ヤバイよ。確かあの3年の片方、学校の理事長の孫だよ。
マジかよ!そうは言っても、ここ!どうすんだよ!
どっかから応援呼ぶから大丈夫、ほら早く!!
悪ぃ。ちょっとよろしく!!
俺は雅紀の後を追いかけた。
つづく